ミシラヌマチ、懐かしの街
この街は、ミシラヌマチ。
今日僕は初めて見知らぬ街を歩いていた。
鄙びた駅前の広場、寂れた商店街、
おばちゃんの井戸端会議、
クタクタの鞄を背負った学生。
そのどれもが、僕にとっては新鮮な景色で。
――この街で、彼女はどんな半生を過ごしたのだろう。
この街は、懐かしの街。
私が一人暮らしをする前まで過ごした街。
見慣れた駅前の広場、よくアイスを買った店、
くだらない遊びで盛り上がったあの公園、
進路に悩んだあの日の私。
そのどれもが、私にとっては見慣れた景色で。
――この街のことは、きっと私以外には分かるまい。
「きっと誰にも分からない」と言いながら、
ミシラヌマチのことを話してくれた彼女。
その時の表情は、いつよりも輝いて見えた。
「きっと誰にも分からない」から、
懐かしの街の思い出を君に話すことが出来た。
多分、あの頃に戻ったような表情で話してるだろうな。
ミシラヌマチに行ったことを、今度彼女に話してみようかな。
一体どんな表情をするだろう。
懐かしの街に、また帰りたいな。
いつかは君を連れて行きたいな。
――ミシラヌマチが、懐かしの街になっていくのに、そんなに時間は掛からないかもしれない。